決意のこもった強い声で、私の目をまっすぐに見た葵。

 ふと脳裏に寂しげなマサシさんの姿が浮かぶ。そして、あれ、と首を傾げた。

 もしそれが正しければ、マサシさんは。


 「あ? ああ、私のことなんてこれぽっちも見えてないよ」


 私の表情で察したのか、葵は強気な口調で、でもマサシさんとそっくりな寂しげな背中でそう呟いた。

 胸がきゅうっと苦しくなる。

 なぜ葵は、自分自身のことがみえないマサシさんのために、人間になりたいなんて言うのだろう。


 「あ、言っとくけど、つい最近まではマサシも私が見えたんだぞ。アイツが『チューガクセイ』の頃までだ」


 マサシさんが中学生のころと言うと、今から二十年ぐらい前の話ではないのだろうか。

 そんなに前の話をつい最近と言うなんて、妖の時間の感じ方は人と違うのだろうか。