積み重ねられた丸太に腰掛けた私たちの間には、重い沈黙が流れていた。


 葵、と名乗った天狗の彼女は、不機嫌な顔で唇を突き出し、腕を組んでいる。

 話しかける言葉もタイミングも、失ってしまった。


 どうしよう、このままじゃ何もしてあげれないし、そもそもお使いの途中だから、三門さんが心配しているかもしれない。


 ちらちらと葵の顔を窺っていると、葵は「ふん」と鼻を鳴らして唐突に立ち上がった。

 思わず体を強張らせる。


 「さっきの男、見ただろ」


 振り向きざまに尋ねてきた葵に、私は慌てて何度も頷く。


 「あいつはマサシって言うんだ。私はあいつのために、どうしても今すぐに人間にならなきゃいけないんだよ」