「────ちゃん、麻ちゃん」


 肩を揺すられる感覚で、次第に頭が覚醒していく。

 ぼんやりした視界の先で、男の人が私の顔を覗き込んでいた。


 なんでだろう、とはっきりしない頭で考える。


 「着いたよ」


 その言葉にハッと目が覚めた。

 慌てて運転席の方を見れば、口元に拳をあててくすくすと笑う三門さんの姿がある。


 赤くなる頬を隠すように俯きながら頭を下げれば、また頭の上に手がぽんと置かれた。


 「長旅だったもんね。直ぐに部屋へ案内するよ、そこでゆっくり休んだらいい」