思わず後退りをすれば、男性が不思議そうに「どうしたんだい」と首を傾げた。
「お前、私が見えているんだろう!」
「ご、ごめんなさい……っ!」
咄嗟にでたその言葉は誰に向けてだったのか。私はその場から逃げ出した。
全速力で歩いてきた道に戻り、振り返らずに必死に走る。
「おい、待て小娘!」
数メートル後ろで声が聞こえて、泣きそうになりながら走った。
「聞こえているんだろ!」
直ぐ耳元でそんな声が聞こえたかと思うと、突然後ろから襟首を引っ張られその場に尻もちを付いた。
痛みに顔を顰めていると、視界の先に下駄を履いた足がうつる。