慌てて頭を下げて少し近付くと、男性は「こんにちは」と目尻に皺を作った。


 「その恰好……君は結守神社の巫女さんなのかな?」


 そう言った男性にひとつ頷くと、男性は「そっか」と柔らかく微笑む。


 「結守の巫女?」


 突然、男性の方から、彼の声ではない別の声が聞こえた。

 目を瞬かせていると、丁度男性の陰で見えなかったもうひとりが、ばっと陰から現れる。

 姿を確認するなり、ひっと息を飲んだ。


 「て、天狗……っ!」


 彼の隣に座っていたのは、小花柄の着物を着た、天狗面をかぶった明らかに異様な少女だった。


 「お前、私が見えるのか!」


 少女が勢いよく立ち上がる。