「麻ちゃん、『大丈夫、大丈夫』」


 そう言って私の頭を軽く叩いた三門さんは、私の背中をそっと押して歩き出す。


 すると先程まで重かった足が嘘のように動き出し、鼓動が落ち着きを取り戻す。

 胸の中を占めていた焦りが、スっとどこかへ消えていく。

 え? と目を瞬かせていると、助手席に促される。

 何が起こったのか理解する前に、車が発進した。