三門さんは手にしていたホッチキスを置くと、私に向き直る。
そして、握りこぶしを作った右手を顔の前に持ってきた。
「一つは言祝ぎ(ことほぎ)の力。人々を祝福する陽の力」
同じように左手でも握りこぶしを作り、顔の前に持ってきた三門さん。
「もう一つは、呪(しゅ)の力。災いを起こす陰の力だ。このふたつが合わさって、言霊の力が作られているんだよ」
三門さんは両方の握りこぶしを顔の前で合わせた。
「ふたつの力は均等に成り立ってはいるけれど、この力を授かった人たちは、幼い頃に言祝ぎの力を強くする修行を行うことで、より災いを生み出さないようにしているんだ。────ここまでは、大丈夫?」
はい、とひとつ頷く。