「お祖父ちゃんは何も悪くないよ!」


 ああ、頭がくらくらする。お腹の底が燃えるように熱い。制御できない強い力が、体の真ん中で渦巻いている。


 「なんで、なんでいなくなって人のことを、そこまでひどく言えるの!? お母さん、おかしいよ!」


 拳が震える。爪が掌に食い込み、それでも痛みなんか感じない。


 「私はあの人が大嫌いなのよ!」


 いなくなってせいせいするわ。

 そんな言葉が耳に入ったその瞬間、ぶわっと顔が熱くなった。


 握りこぶしを横に振り上げ、勢いよく壁を叩く。




 「……私の部屋から『出てって』ッ!」




 歯を食いしばってお母さんを睨みつけたその瞬間、ヒュン────と顔の真横を何かが通った。