三門さんは私の手を取った。
先ほど社頭でぶつかって尻もちを付いた時にできたのか、掌には少し血が滲んだ小さな擦り傷が付いている。
三門さんは静かに目を閉じると、私の手を両手で包み込む。
「────『痛いの痛いの、飛んでいけ』」
まるで歌うような優しく伸びやかな声でそう呟いた途端、掌がじんわりと熱くなる。
そして三門さんの手が離れて、私は目を見開き息を飲んだ。
たしかにそこにあった掌の傷が、奇麗になくなっていたのだ。
「これが僕の力、言霊の力。麻ちゃんと同じ力だよ」
まだ温かさの残る掌を握りしめるように拳を作り胸の前に引き寄せると、顔を俯かせた。