「麻ちゃん!」


 薄暗い駅から出た途端、眩しい太陽に照らされると共に私の名前が呼ばれた。


 あたりを見渡せば、一台の軽自動車が線路沿いのあぜ道に止められていて、その運転席から誰かが手を振っていた。


 パタン、とドアが開き、乗っていた人がこちらへ駆け寄ってくる。


 優しげな目元が印象的な聡明そうな顔立ちの青年は、私の前まで走ってくると手を差し出して微笑んだ。



 「待ってたよ、麻ちゃん。僕が君に手紙を送った、松野三門です」


 久しぶりに、と言うよりもほぼ初めて会った彼は、穏やかでとても優しそうな人だった。