目元のなみだを拭ったお母さんは「私も大好きよ」と呟く。家鳴りはと嬉しそうに声をあげて、お母さんの指に抱きついていた。


 「麻、あなたもね」


 そう言って私のもとへ歩いてきたお母さんは、力一杯に私を抱きしめる。その温もりに少し涙が零れそうだった。ここへ来てから泣いてばかりだなあ、と少し苦笑いを浮かべて、その背に手を回した。

 お母さんの肩越しに、社務所の前に立つ三門さんが見えた。みくりとふくりが駆け寄っていく。三門さんは彼らと一言二言かわすと、目を弓なりに細めて『良かったね』と口を動かした。