お母さんの足元にいる家鳴に掌を差し出せば、ぴょんとその上に飛び乗った。お母さんの目の前に突き出す。恐る恐る差しだしてきたお母さんの掌に、家鳴は飛び移った。
「掌に乗ってるよ。家鳴って小さいのに悪戯の規模は大きいしとってもヤンチャなんだけど、とっても優しい子なんだよ」
「……いま、私の掌にいるのね」
うん、と頷けば、お母さんは顔を顰めた。大粒の涙が家鳴に降りかかり、彼はまた必死に手を伸ばす。
「何も見えないのに、少しだけ分かるの。重さと温かさが。私はこの暖かさを知ってる。小さかったころ、泣いているときに膝の上に感じていたの」
家鳴が振り返って私を見上げた。どうしたの、と首を傾げれば、家鳴は自分の体を抱きしめてくねくね動くと、両手を口元にあてて「ちゅっ」と勢いよく放す。そして、お母さんを指さした。
ふっと笑ってひとつ頷く。
「家鳴が、大好きって言ってるよ」