「────そんなふうに思っていたの?」
「え?」と戸惑い気味に聞き返す。
「私がそう思わせてしまっていたのね」
お母さんは目を伏せたまま、切なげに微笑んだ。
「……さっき、妖と話していたのよね?」
「ううん、さっきはここの神使の狐たちと話していたの。でも、他の妖たちとも話すよ。皆とても優しいの」
お母さんは寂しげに目を伏せた。
「あの日、直ぐに気が付いたの。松野の力を引き継いでいるって。そんなあなたが羨ましくて、妬ましかった。私は授かることができなかったから。松野の家にはふさわしくない人間なんだってわかった途端、見えないもののために必死になるあのひとたちが馬鹿らしく思えたの。妖も、私を嫌っているんだって」
夢で見たとおりだった。悲しみがどんどん大きくなって、そして形を変えてしまったのだ。でも本当は違うんだよね。
ポケットに入れていた四つ折りの紙を手に取った。それをお母さんに差し出す。