社まで戻ってきたころには、太陽は高い位置にあった。

 参道を歩いていると、昨日まではいなかったふくりとみくりの姿が、本殿前の台の上に戻ってきているのが分かった。

 「稲荷コロッケ買ってあるよ」と手を振りながら歩み寄ると、瞬きした次の瞬間にはふたりの姿は足元にあった。


 「お前にしては気が利くな! さっさと出せ!」


 コートの裾を咥えて引っ張るみくり。本殿の屋根の下で、床に手ぬぐいを敷いてふたつ並べた。ふくりが私のそばに座った。


 「麻、今日帰るんだって? 家鳴たちから聞いたよ」

 「うん、お昼ご飯を食べたら帰るよ」

 「寂しくなるね」


 ふくりがクオンとひとつ鳴いて私を見上げる。「私も寂しい」とその首に手を回して抱きしめた。


 「おいふくり。それ、いらないなら寄こせ」

 「誰がいらないなんて言った? それに、お前はもう少し他人の気持ちに聡くなるべきだよ」

 「ふん。ひとは面倒だ、どうでもいい。ああそうだ。麻、家に戻る前に台のそばに置いてある巾着を持って行け。薬草が入っている。煎じて飲めと三門に伝えろ」