「私の言葉、葵の役に立てたかな」

 「は? 何言ってんの、当たり前じゃん」


 間を開けずして返ってきた返事に、今度は私が目を点にした。


 「麻がいなかったら、マサシと目を合わせることも話すこともできないままだったんだぞ。『心なら助けてあげられる』って言葉、すごくよく覚えてる。私が“痛いの痛いの飛んでいけ”って言ったら、あいつ泣きそうな顔して笑ったんだ」


 どこかマサシさんに似ている、とても優しくて穏やかな顔だった。


 「なんでそんなこと聞くんだよ」

 「……いま、悩んでて」

 「何に?」

 「えっと、いろいろ」


 葵はそこまで興味がなかったのか「ふうん」とだけ相槌を打った。


 「まあ、何に悩んでいるのかは知らないけど、私は麻にとっても感謝してるぞ。これでいいか?」


 うんうんと何度も頷いた。

 葵は何も後悔していなかった。そのことがとても嬉しくて、なんだか泣きそうになった。