ちょこんと腰を下ろして稲荷コロッケを膝の上に乗せる。


 「それで、こんなに朝早くからどうしたんだ?」


 首を傾げながら、私が話し始めるのを待ってくれる。


 「あのね、今日、家に帰るの」

 「……? 家に帰るのは当たり前だろ」

 「家って言うのは、お社の方じゃなくて、生まれ育った本当の家のほう」


 目を点にした葵は数秒遅れて「はあ⁉」と大きな声をあげる。


 「んなの何も聞いてないし! 何で黙ってたんだよ、友達だと思ってたのに!」


 勢いよく立ち上がって私を責める葵に、申し訳なさが募る。


 「ご、ごめんね。私も最近聞いたばかりで、伝える時間がなかったの」

 「なんだよー……」


 不貞腐れた顔でどしんと座り込んだ葵。


 「あの、それでね。帰る前に、どうしても聞きたいことがあって来たの。もちろん葵に会いたかった気持ちが一番だよ」


 そういうと、不機嫌ながらもどこか嬉しい気持ちを隠しきれていない表情で「なに?」と聞いてきた葵。

 私は一呼吸おいいて、おもむろに口を開けた。