「ご、ごめんなさい。無意識だったんです」
「うん、いや、分かってるよ。謝らないで。松野の力を引き継いだ時点で、妖と深い関係を持つなって言う方が難しいんだ」
そう言いつつも、難しい顔をしたままだった。
三門さんは私が妖に深くかかわることを望んでいない。ケヤキの一件で、『もう深くかかわらないほうがいい』と言われたばかりだ。私を心配していってくれた言葉というのだって自覚している。
それを分かっていて自覚していて、それでも、お母さんと家鳴たちの夢をみて『関わらないでおこう』なんて選択肢は出てこなかった。思いつきもしなかったのだ。
「危険なことをしようとはしていないんだよね?」
もちろんです、と即答する。夢で見た内容と手紙を書くことになった経緯を事細かに説明する。最後まで聞き終えると、三門さんは安心したように肩の力を抜いた。