きゃいきゃいと鳴き声をあげて逃げようとする家鳴たちは、どこか楽しそうだった。
「麻ちゃん? 何か、すごい音がしたけど大丈夫? 起きてる?」
障子の向こうから三門さんの声がした。
その声を聴いた瞬間、今度は必死に逃げようと暴れだした家鳴たち。
「み、三門さん! 手伝って下さいっ」
「ん? はいるよ」
怪訝な顔をしながら部屋に入ってきた三門さんは、墨で真っ黒になった机や散らかった紙、そして何より手形だらけの私の顔と暴れ狂う笊を見て頬を引きつらせる。
「────またお前たちの仕業か」
その低い声に、気温が確実に五度は下がった。笊の中に閉じ込めた家鳴たちが「ひっ」と息を飲むのがよくわかった。
三門さんはにっこりと微笑む。
「麻ちゃん、お風呂入っておいで。あとは僕が何とかしておくから」
「あ、ありがとうございます」