身震いと同時に目が覚めた。のっそりと顔をあげると、見慣れた景色が広がっている。白い光が部屋に差し込んでいた。時計は朝の五時を指している。氷のように冷たくなった肩を擦りながら、毛布を引っ張り肩にかけた。

 家鳴たちと手紙を書きながらいつの間にか突っ伏して眠っていたらしい。机の上では身体中を墨だらけにした家鳴たちが雑魚寝していた。ひとつ欠伸をして目を擦る。ふと視線をやった手の甲が、墨で真っ黒になっていた。

 ん? と眉間に皺を寄せながら手鏡を取り出して覗き込む。


 「……ああっ!」


 私の声に家鳴たちが飛び起きた。寝ぼけた顔できょろきょろと辺りを見回す。

 鏡に写る自分の顔に、それを持つ手がわなわなと震えた。顔のいたるところについた小さな五本指の手形、間違いなく家鳴の仕業だ。

 私の顔を見るや否や、家鳴たちが「やらかした」という表情になる。誤魔化すように「えへへ」と笑いながら、少しずつ私から離れていく。


 今回は私の方が早かった。小豆を入れていた笊で、逃げ出す直前だった家鳴たちを一匹も逃さずに捕まえる。