「あの景色を見てからね、夜中にこうやって目を閉じると、どこからか笛の音色が聞こえてくるんだ」
目を見開いた。風に乗って、越天楽の笛の音色が、たしかにここまで届いてきている。まさか、でも、だってそんなことが。
「だから、お父さんが全部知ってるって教えたうえで、麻に尋ねるよ。でももし話したくないんだったら無理に話さなくてもいい。お父さんも『昨日は麻と話す夢を見たような気がする』って、明日の朝にいうからね」
柔らかく微笑んだお父さんは、もう一度「何があったの」と優しく問いかける。その優しさが痛いほどに胸に染み込んだ。
嬉しくて、ほっとして。でも迷って、悩んで、少しの怖さがあって。私が黙って考えている間も、お父さんはずっと見守ってくれていた。
きっと目も鼻も赤くなっているんだろうな。そんなことを考えながら答えた。
「いつか全部はなしたい。私が、全部と向き合えるまで……待っててほしい」
お父さんは「そっか」とだけ言って私の頭に手をおいた。
「家族だから、時間はたくさんあるよ。でも、お嫁に行くまでには教えてほしいかなあ。僕もお義父さんみたいに、かっこいいこと言いたいから」
「……ふふ、わかった」



