廊下はとてもひんやりとしていて、耳鳴りがしそうなほど静かだった。歩くたびに廊下が軋み、少し前の私ならそれにびくびくしていたんだろうなあと、少しおかしくなる。今では風に乗って聞こえてくる裏の社の賑わいのおかげで、暗い廊下も怖くなくなった。
居間から灯りが漏れていた。三門さんが帰ってきているのだろうか。
そうっと障子を開けてみると、廊下と反対側に座ったお父さんがガラス戸越しに月を見上げていた。
「お父さん……?」
「麻。どうした、トイレ?」
首を振りながら中に入る。暖房がよく聞いていて暖かかった。
「なんだか眠れなくなっちゃったから、お裁縫の続きをしようと思って。お父さんは?」
「さっきまで三門くんと晩酌してたんだ」
「三門さんと!」
えっ、と目を丸くしたけれど、ふと考えてみると三門さんはもう大学を卒業している年齢だからお酒は飲んでも構わないんだった。普段お酒を飲んでいる姿を見たことがなかったから、少し意外だった。



