少女から女性へと変わった真由美は、昔と変わらず部屋のすみで膝を抱えて小さくなった。涙が畳に染みを作る。どうしても止めることができなかった。
その時、箪笥の陰から小さな影がいくつも動いた。おぼつかない足取りで、陰から顔を出す。ひとつかみの赤い髪に、大きな丸い目をしたそれは、少女がずっと会いたがっていた妖、家鳴だった。
たくさんの家鳴が少女の足元に集まって、きゃいきゃいと鳴き声をあげる。少女はそれに気が付くことはなかった。
『なー』
『なっ、んなあ』
『な、なあ……』
家鳴たちは必死に手を伸ばした。
『な、うー』
『なうあっ』
角が欠けた一匹の家鳴が、少女の体を上っていく。少女の肘の上に乗ると、両手を広げてその頭に抱きついた。
『なくうー、なあ、な……なく、な。なくなっ』
なくな、なくな。
家鳴たちがそう繰り返す。
少女はやはり気が付かず、大粒の涙が雨のようになって家鳴たちの頭に落ちた。



