何やらまた、ひとり深く考え込んでいるらしい。ぶつぶつと呟きながら唸り声をあげている。
「お前の話を聞いていると、なぜか不穏なものを感じるのだ」
「不穏なもの?」
怖々と反復した私に円禾丸は深く頷く。
不穏なものっていったい何だろう。どういう意味だろう。見えない何かが背中に迫ってくるようなそんな気がして、少し恐ろしくなった。無意識に自分の体を抱きしめる。
「すまない、恐がらせるつもりではなかったのだが」
彼は「よし」と立ち上がると、おもむろに腰の刀を鞘ごと引き抜いた。刀身をあらわにさせ、そして柄の部分をかちゃかちゃと弄り始める。
「ほれ、手を出してみよ」
首を傾げながら両手を差し出す。掌に冷たい感覚の何かが乗せられた。小判のような形をした金色に輝くそれは、真ん中に妙な穴が開いている。
「刀の“切羽”という部分だ。私の一部をお前に渡しておこう」
「でも、いいの……?」
「ああ。紐でも通して首から下げておれ。それひとつでも、守り刀の代わりくらいにはなるだろう」
切羽を顔の前で掲げた。ありがとう、と胸の前で大切に握りしめる。