「どうかした……?」
我に返ったように目を瞬かせると、円禾丸は次第に緩む口元を押さえた。
「お前は変わらぬのお。覚えておらんだろうが、同じことを五歳のお前に言われたのだ」
円禾丸は昔に思いを馳せるように、目を細めて微笑んだ。あまりにも優しい顔だったので、なんだか少し恥ずかしくなって顔を反らす。
「……年を経ても、本質は変わらぬという訳か」
「え?」
「いや、何でもない。それにしても不思議だ。なぜ幼い頃の記憶が全くないのだ?」
「わからない。三門さんにも会ったことはあるらしいんだけれど、覚えていないの」
三門も? と驚いた表情をした円禾丸。私が一つ頷けば、腕を組んで首を捻る。