「ここはどこなの……? 私、裏の扉から本殿へ入ったつもりだったの」

 「ここは宝物殿、我が主が民に授与した宝物が収めれている。この場所は一見ひとつの建物に見えるが、ふたつの建物で成っているのだ。人からも妖からも、見つけにくいようにな」


 なるほど、と頷いた。簡単に言うと盗人対策と言うわけだ。

 円禾丸が手招きして一つのガラスケースの前に私を呼んだ。歩み寄れば、一メートルくらいはありそうなとても大きな刀が大切に飾られている。

 黒光りする重厚な鞘に、二重丸に稲穂の社紋が刻まれ、細やかに金箔が押されている。円禾丸の狩衣と同じ藤色の柄糸が鮮やかで、刀については詳しくない私でも分かるほど、とても美しかった。


 「私の刀身、大太刀の円禾丸だ。二尺五寸三分ある。稲穂のようによくしなり、光を浴びれば金に光るのだぞ」

 「とても綺麗な刀なんだね」


 ガラスケースに顔を寄せ、呟くようにそう言う。しばらく円禾丸からの返事がなかったので、不思議に思いながら振り返る。彼は少し目を見開いたまま固まっていた。