「巫女さん、おみくじ二回」

 「あ、えっと四百円になりま……お納めください」


 小さなお賽銭箱に四百円を入れた参拝者が、木箱に手を入れる。取り出した紙を広げて一喜一憂する姿に頬が緩む。このくらいの仕事なら、私にも手伝えそうだ、とそっと胸をなでおろしたその時、


 「ねえねえ巫女さん、どうしておみくじって結ぶの?」


 ひとりの小さな女の子が、を傾げながら尋ねてきた。周囲にいた人たちも「たしかに」と顔を見合わせる。みなの視線が一気に集まった。


 「えっと、あの、」

 「ねえ破魔矢はないの? ほら、御神矢って書いてあるんだけど、あれは破魔矢ではないの?」

 「ちょっと、私が先に並んでいたんだから、私がさきでしょう!」


 言葉に詰まっていると、他にも待っていた人たちがぎゅうぎゅうと前に押し合う。苛立ち、揉め始めた参拝者たちにおろおろしていると、隣に座っていた篠が勢いよく立ち上がった。