「はいはい、順番に聞くから待ちなってば! で、アンタは何だって? 温かいそば? ここは蕎麦屋じゃないてさっきから言ってんだろう!」


 本殿に隣接された授与所の前は大勢の人で賑わっていた。授与所の中で青女房が目を回している。裏口から中に入って、授与所を仕切る紅白幕をまくり上げて顔を覗かせる。


 「麻じゃないか、明けましておめでとう! どうしたんだい?」

 「おめでとう、授与所を手伝いにきたの」

 「それは助かるよ! じゃあ早速追加のお守りを持って来て頂戴よ、場所は分かるだろう?」


 ひとつ頷くと急いで雪駄を履き直し、授与所の扉に手を賭けたその時、誰かが外がわから扉を開けた。


 「あっ……」


 真っ直ぐに伸びた長い黒髪を低い位置で束ねて、前髪をきっちりとピンでとめている巫女装束を着た少女が、大きな段ボール箱をふたつ抱えてそこに立っていた。先日紹介してもらったばかりの、妖狐の篠だ。