「人の腕の中は温かいからいいねえ。老体にこの寒さは厳しいんだよ」


 「おいっ、だらしないぞ、ふくり!」と、みくりが毛を逆立る。

 そんなみくりの姿に気が付いた村の子供たちが「白狐さまだ!」とその背中を撫でに来るものだから、みくりもしぶしぶ大人しくなる。子どもたちに追いかけまわされるみくりをひとまず放っておいて歩き出す。


 「どこに向かっているんだい」

 「ユマツヅミさまに新年の挨拶をしようと思って」

 「ああ、それなら本殿の後ろ側に回るといいよ。何も挨拶は前からしなければならないわけじゃないんだよ」


 へえ、と目を丸くした。

 ふくりが言うには、本殿の後ろ側の方が祭壇に近いらしく、神様により近い位置から声を聴いてもらうことができるのだとか。

 そんな話を聞きながら言われた通り本殿の後ろに回ると、ふくりに教えてもらってように後ろから参拝する人の姿がいくらかあった。