本殿の前から鳥居の前までの参道には、長蛇の列が伸びていた。みんなユマツヅミさまに挨拶をするために並んでいるらしい。

 新年の挨拶をしてくる村の人たちに小さく頭を下げながら列の一番後ろに向かっていると、足元でちりんと鈴の鳴る音がした。不思議に思って見下ろす。


 「こんなところで何を呑気に立っているんだ」

 「あけましておめでとう、麻」


 首に金の鈴をつけた白狐が二匹、私を見上げている。ユマツヅミさまの神使であるみくりとふくりの姿を確認するなり、私はぎょっと目を見開いた。


 「え、えっ、ふたりともだめだよ! 狛狐なのに、動いちゃっ」

 「バカ娘が。昨日、三門からそのわけを聞いたばかりだろう」


 ふんす、と鼻を鳴らしたみくりは馬鹿にするように目を細めた。

 そうだった、おもてらの社は特別な呪いがかかっているんだった。だからどんなことが起こっても受け入れられるんだった。


 「新年早々口が悪いんだから、困ったもんだねえ」


 呆れたように言ったふくりは、私の膝に前足をおいて仁王立ちする。その脇に手を入れ、胸の前で抱き上げた。満足げにひとつ鳴いたふくりは少し身じろぎをして腕の中で丸まる。