ババは箪笥をごそごそと漁ると、狐の顔の形をしたがま口財布を手に私の前に立った。
「今どきの若い子供たちは動物の顔の形をした財布を首からさげるんだろう?」
紐の部分を私の首にかけたババは満足げに頷く。
「これ、ババが作ったの?」
「そうさ」
「すごい、とっても可愛い。ありがとう」
顔の前まで持ち上げてよく見ながらお礼を言う。ババは机の上から自分の財布を取ると、そこからいくらか小銭を出して狐のがま口財布に入れた。
「お小遣いだよ、いつもよりたくさん出店が出ているから遊んでおいで。でも夜更かしは駄目だよ。それから、三箇日は三門の手伝いをしっかりすること」
ババは私の頬を撫でて微笑んだ。そしてふと真剣な表情を見せる。
「あの子も兄を亡くしているのは知っているだろう? だから、ケヤキと兄弟を最後まで助けてあげられなかったことを一番悔いているのは、三門なんだよ。だから、責めないであげておくれ」
どうして知っているの、と目を見開く。「ババアになると、何でも分かるようになるんだよ」と、少し寂しそうに目を伏せた。