「ケヤキと……ケヤキの弟たちは、同じ場所へ向かえますか」
「少なくとも最後の弟は、木霊として終わることができたんだ。必ず同じ場所にいるよ」
ケヤキの想いが報われたんだと思うと、またほんの少し視界が滲む。目じりを拭いながら、「良かったね、良かったね」と胸の中で繰り返した。
昔みたいに兄弟と一緒に、過ごすことができるんだね。これからはもう寂しくないんだね。
「今の代の閻魔さんは気が弱いから、強く出たら融通してくれるんじゃないかな」
冗談っぽくそう笑った三門さん。私のための気遣いなのだと直ぐに分かったから、ほんの少しだけ笑った。
「あの時僕が唱えたのはね、ひふみ祝詞といって、マイナスの力をプラスの力に変えてくれる力を持っているんだ。いろいろな文献を調べていると、ずいぶん昔にこの方法で妖の暴走を止めたという話を見つけてね。もしかしたらって思って」
マイナスの力をプラスの力に。胸の中で繰り返す。マイナスをプラスに。魑魅の憎しみや怒りといった負の力を、正の力に変えた。魑魅の正の力は、木霊だったころの彼自身が持っていた力だったんだ。だから、木霊の姿に戻ることができた。