「ゆっくり休めた?」


 こちらを窺う三門さんに言葉が詰まった。


 「えと、あの」

 「泣きつかれて眠ったみたいだから。ババにもそっとしておくように一旦だけど」


 目を見開いたその瞬間、数時間前の光景が脳裏をよぎった。手にしていた箸を落としてしまい、慌ててそれを拾い上げると顔をあげることができなくなった。


 「ケヤキは……」


 三門さんは何も言わなかった、ただ静かに首を振る。さっきあれほどたくさん泣いたのに、またすぐに目頭が熱くなった。

 背中に感じたあの光はケヤキのものだったんだ。背中越しでも分かるくらいに、頼もしくて力強く、弟の木霊の魂よりもうんと温かくて優しかった。ケヤキのそのままの姿を現すような柔らかな光だった。

 ケヤキの魂も空に昇った。朽ちかけた体で、兄弟を救うために無理をし続けたんだ、そうなってしまうのは運命だったのかもしれない。