三門さんが私の肩に手を置いた。少し強引に引き寄せて、そして歩き出した。背中越しにケヤキの泣き声が聞こえる。私は勢いよく振り返った。


 「ケヤキ、私、あなたに渡したいものがあるっ。不器用だから、まだできていないけど、絶対渡すから、だから、」


 ケヤキがゆっくりと振りむいた。目じりの雫をすくって柔らかく微笑むと、ゆっくりとひとつ頷く。


 「あとで、頂きに参ります」


 三門さんが私の肩を強く引き寄せて、歩くように促す。振り返らずに歩いた。しばらくすると、背中にいっそう優しい温もりと強い光を感じ、その場に泣き崩れた私に三門さんはいつまでもそっと寄り添ってくれた。