『────魑魅?』
不思議そうに尋ねた三門さんに、彼は重々しく頷いた。
『はい。一昨年から探し始め、この手でしかるべき場所へ還してまいりました』
難しい顔をしたふたりについて行けず、ひとり首を傾げた。それに気が付いた三門さんがすかさず説明をしてくれる。
妖のなかでも、とりわけ害のある妖がそう呼ばれているらしい。その形はなく、真っ黒な靄が集まったような禍々しい姿をしているのだとか。
ケヤキはおもむろにこちらへ背を向けると、着物の襟に手をかけ片方の肩をはだけさせる。
慌てて顔を反らそうとしたけれど、見えてしまったその肩に思わず動きを止め、はっと息を飲んだ。
彼の右肩から腕、そして胸にかけて、まるで皮膚が死んでしまったかのようにどす黒い色をしていたのだ。