「麻どの。どれ、私も手伝いましょう」
両手に木箱を抱えていた私にそう声をかけたのは、ケヤキと名乗った木霊の彼だった。
旅装束を解いたのか、今は焦げ茶色の着流し姿だった。
ケヤキは三つあるうちの二つを軽々と持ち上げて「どちらに運びましょうか」と尋ねる。
「いえ、そんな、申し訳ないです……!」
慌てて手を差しだした私をやんわりと制したケヤキは、目を弓なりにして微笑む。
思わずその笑みに見惚れてしまい、しばらくしてはっと我に返る。
「す、すみません……じゃあ、本殿に」
「かしこまりました」
私の歩調に合わせてゆっくりと歩いてくれるケヤキの横顔を盗み見る。ふと、さきほどのことを思い出した。