小走りで社務所の前に回ってきて本殿へ向かう。

 本殿の前に三つの影があった。そのうちの二つはみくりとふくり、もう一つは地面の上でうつ伏せになって倒れていた。


 「おお三門、丁度いい。変な男が急に倒れたぞ」

 「またそんな、他人事みたいに」


 前足でその人をテシテシと叩くみくりに、ふくりは呆れたように息を吐く。


 菅笠に合羽を身に着けた若い男性。よく時代劇なんかで見る、旅人の服装に似ていた。

 癖のある長い髪は後ろで一つに束ね、女性かと見間違えてしまうほど透明感のある美しい顔立ちをしていた。


 顔を覗き込んだ三門さんが「自宅の方へ運ぶよ」と、男性の胴に手を回す。

 私が「手伝います」と言うまでもなく、軽々と肩に担いで歩き出した。