「お兄さんは今……」
「彼が十七の時に亡くなったよ」
え、と言葉を詰まらせる。三門さんは慌てて「気を遣わないでね」と笑った。
私は何て馬鹿なんだろう。
お兄さんを失った三門さんが、一番典子さんの気持ちを分かったあげることができるのに、私はどうしてあんな困らせるようなことを言ってしまったんだろう。
「兄さんはいつも僕に言ってた、『自分を大切にすること』って。大切にするということの中には、『自分を責めないこと』も含まれているよ」
そう言って笑った三門さんは、私の頭に手を乗せた。
三門さんのようになりたい。
この力の恐ろしさや辛さを知ってもなお、誰にでも平等で、優しく強くある三門さんのようになりたい。
沈みゆく夕陽をまっすぐに見据える三門さんの横顔を見つめながら、強くそう思った。