「無理もありません。体調を崩して倒れられたんですから」


 典子さんは額に手を当てながら目を瞑る。


 「不思議ね……とても幸せな夢を見ていた気がするのに、すごく切なくて胸が苦しいの」


 そう言って目頭を押さえた典子さんから、私はそっと視線を外した。


 「私ももうおばあちゃんだから、涙もろくなっちゃったのかしらね。────あら? まあ、見て」


 突然声を弾ませた典子さんが庭を指さす。

 干されたシーツの陰から、黄土色の毛をした狐がこちらを見ていた。


 「綺麗な狐さん。ほら、おいで」