そう言って微笑んだ多聞が立ち上がる。
隣の部屋に続く障子を静かに開ければ、敷かれた布団に典子さんが眠っていた。
「……ほんとは何度も、やめないとって思ってた」
典子さんの側に膝を付いた多聞は、典子さんの顔を覗き込むと、そっとその手を握りしめた。
「三門さん、お願いします」
涙を浮かべた目を細め、小さく微笑んだ多聞が振り返る。
三門さんは小さく頷くと、ふたりの側に歩み寄り、静かに腰を下ろした。深く頭を下げた三門さんが、すっと息を吸い込む。
「『高天の原に神留ります 神魯岐 神魯美の命以ちて 皇御祖神伊邪那岐命────』」