「でも、他に方法が」

 「麻ちゃん」


 嗜めるように名前が呼ばれて、強く唇を噛み締めた。


 分かっている。

 昨日の晩にすべてを聞かされて、ふたりがこれ以上一緒にはいてはいけないことも、典子さんからこの三ヶ月間の記憶を消さなければならないことも。


 でも、だって。そんなの納得できるはずがない。私だったら、絶対に納得なんてできるはずがない。

 短い時間であれ、ふたりが築いてきたのは本物の親子の絆だ。


 私が三門さんとここへ来ていることに気が付いたときに、多聞が逃げようとしたのはその絆を守りたかったから。ふたりの時間を守ろうとしたからだ。


 「ありがとう、巫女さん。でももういいんだ」