赤の他人でましてや人と妖なのに、多聞は典子さんのことを「母さん」と呼んで慕っていた。

 そしてまるで本当の親子のように、多聞から感じたのは紛れもない愛情であり、典子さんが多聞に向けていたものもまた、息子への無償の愛だった。


 赤の他人が膝の悪い母を気遣うだろうか。冷える肩に羽織をかけてあげるだろうか。震える手を握りしめて慰めてあげるだろうか。


 あの夢から感じられたのは、偽りのない優しさだった。