とても大きな事故だったと聞いた。そしてどれほど典子さんの胸に深い傷として残ったのかも。


 「君は時生さんに化けるだけじゃなく、典子さんに憑いてしまっている。狐憑きは人間にとって、とても害がある。実際に典子さんは、ずっと体調を崩している。それも分かっているね?」


 優しく問いかける三門さん。多聞がもうひとつ頷いた。


 「どうして時生さんに化けたの?」


 多聞が顔をあげる。その瞳からボロボロと涙が零れ落ちた。


 「ごめん、なさい。僕のせいなんだ、僕が、僕が全部奪った」


 ふと、昨日見た夢を思い出した。夢と現実が重なる。

 ああ、そうか。私が夢に見たのは、多聞が時生さんに化けたときの記憶なのだ。