じっと顔を覗き込んでいると、妖狐の瞼が小さく震えうっすらと目が開いた。

 我に返ったように目を見開いた妖狐は、飛び起きて私から逃げるように距離を置く。

 鼻を鳴らして切なげに目を伏せた妖狐は、きゃいきゃいと小さな声で鳴く。


 「人の姿になれる?」


 優しい声で問いかけた三門さんにひとつなずいた妖狐。

 その場で高く飛び上がり空中で一回転すると、私が瞬きした次の瞬間には座布団のうえに時生さんの姿で座っていた。

 俯いていて表情は見えなかった。


 「……母さんは」

 「大丈夫、少し目を回しただけで、今はぐっすり眠っているよ」


 彼は安心したように息を吐く。