典子さんを布団に運んだ三門さんが戻ってきた。私の膝の上で眠る妖狐を一瞥し側に座る。


 「……この子、ひどく疲れているみたいです」

 「大人の妖狐でも、長時間の変化はとても大変なことなんだ。この子はもうずっと妖狐の姿に戻っていなかったみたいだからね」


 三門さんは目を細めて妖狐の頭をそっと触った。

 私が先ほど唱えたのは、人に化けている妖の正体を見破る呪文らしい。本来は指を組み合わせた「狐の窓」という印と共に使う言葉らしい。


 時生さんに化けていた妖狐を、無理やり元に戻したのだ。