塀の低い庭で真っ白なシーツを干していた時生さんは、手を止めて振り返った。私の姿を確認するなり、目を瞬かせる。


 「君は結守さんの────ひとりで来たの?」


 言葉の途中で、時生さんの表情が変わった。微笑みは消えて険しい顔へと変わる。

 ばくん、と大きく心臓が波打った。目を見開き、慌てて首を振る。


 時生さんは抱えていたシーツを縁側に置くと、「母さん、僕暫くでかけてくる」と典子さんに早口に告げた。

 私は慌ててその腕を掴む。時生さんがはっと息を飲んだその瞬間。



 「『────けしょうのものか、ましょうのものか、すがたをあらわせ』」



 三門さんに教えてもらった言葉を三度はっきりと呟いた。