「……悪いのは連絡を寄こさなかった僕だ。母さんは、何も悪くないよ」
「じゃあ、時生も何も悪くない」
男性は喉の奥がきゅうっと締まって、目頭が熱くなっていくのを感じた。
「もう一度、こうして時生が返ってきてくれて、一緒に食卓を囲むことができて、こうして星を見上げることができて。本当に夢みたい。ありがとう」
男性はひどく顔を顰めた。堪えきれなかった嗚咽が、涙と共に零れる。
「ごめん、なさい。ごめん、ごめん……っ。僕のせいなんだ、僕が、僕が全部奪ったっ」
「あらあら、まあ。急にどうしたの」
皺だらけの小さな手が重ねられ、その温かさにもっと涙腺が緩む。重ねられたその手を、離すものかと強く握りしめる。
「大人になっても、まだまだ泣き虫さんね」
ただただ「ごめんなさい」を繰り返す男性に、女性は困ったようにそう言った。



