あやかし神社へようお参りです。

 「母さん、もうそろそろ中へ入りなよ。体が冷えてしまうよ」


 夕食後、縁側に腰を下ろし夜空を見上げていた女性は、そう言われて振り返る。

 声をかけた男性は呆れた風に肩を竦め、すっかり冷えてしまっているその肩にそっと羽織をかけてやる。

 女性は嬉しそう微笑むと、差し出された手を握ってひきよせる。

 そして隣に座るように促した。


 「……たく、仕方の無い人だなあ。体に障るから、ちょっとだけだよ」


 溜息を零しながらそう言って、隣に腰を下ろす。ふたりは会話をすることもなく、静かに寄り添いながら空を見上げていた。

 触れそうで触れない、 けれどお互いの熱を感じられる距離。とても心地よくて、なんだか胸が詰まる。


 「ねえ。時生が三歳の頃に、一緒にこうして星を数えたの、覚えているかしら」

 「そんなに昔のことなんて、覚えていないよ」

 「それもそうよね」