「ただいま、母さん」
壮年の男性が玄関の戸を開けて中へ入る。
地板の腰掛け靴を脱いでいれば、奥から割烹着姿の年老いた女性が小走りで駆け寄ってくる。
「おかえり時生。お使いありがとう」
「ああ、もう母さんってば。走らなくてもいいから」
男性が慌てて立ち上がりそう嗜め、母親の両肩に手を乗せる。
母親は嬉しそうに微笑むと、男性の腕にそっと自分の手を重ねる。
「どうしたの?」
「ふふふ、なんだか夢みたいね」
「何だよそれ」
くすくすと笑いながら母親を縁側に連れて行き、座るように促した。
見上げる母親にそっと微笑む。



