「言うなばか! 兄ちゃんのばかーっ」
「いてっ、何すんだよこのとんちき狐!」
号泣しながら兄の着物を引っ張りぽかぽかと背中を叩く弟に、今度は兄が反撃に出る。
もみあいになる寸前で、三門さんがふたりの首根っこを捕まえて引き離した。
にっこりと笑う三門さんに、ふたりの顔が強張る。
「……僕と君たちのお母さんと、どっちが怖いか知ってるよね?」
二人はすっかり耳を後ろに倒して尻尾を足の間に入れた。ほぼ半泣きで何度も頷く。
お母さんよりも三門さんの方が怖いんだ……。
三門さんはひとつ溜息を零し、二人を開放して向き合った。
「人に憑いたって、どういうことだい?」
「こいつ、人間の家に出入りしたんだよ!」
三門さんが「本当なの?」と弟の方に尋ねる。



