その背中を見送ってから本殿の前に戻ると、溢れかえっていた人たちが少し減っていた。
町の公民館へ移動して打ち上げのようなものがあるらしい。
挨拶してくる人たちに会釈しながら歩いていると、御神木の下に人影が見えた。
あれ、あの人って……。
ぼんやりと御神木を見上げるその男性に近づき、そっと声をかけた。
「────三田さん」
「ん? ああ、この間の巫女さんだ。こんにちは」
我に返ったように目を瞬かせた三田さんは、私に向かって柔らかく微笑んだ。
「母を迎えに来たんだけど、見当たらなくて」
うん? と首を捻って、思い当たる節があった。先ほどのおばあさんだ。
「もしかして、三田さんは三田さんの、え、あれ?」
「ああ、僕の名前は三田時生です。時生でいいよ」
少し赤くなりながら、頭を下げる。



